『牛と土』
―福島、3.11その後。―

眞並恭介著
集英社
定価 1,620円(本体1,500円+税)
四六判ハード 272ページ
C0095 ISBN 978-4-08-781567-2

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牛よ、ふるさとの大地を守れ!
被曝した牛が教えてくれたこと。

東日本大震災、そして福島第一原子力発電所の事故発生。
原発から半径20キロ圏内の警戒区域に、
約3500頭の牛が取り残された。
殺処分を受け入れるのか、受け入れないのか。
牛と牛飼いたちに苦渋の選択が突きつけられる。

原発事故は、周辺の地域の人々から生きる場所を奪っただけでなく、そこで飼われてきた家畜の命も奪った。警戒区域が設定された4月22日以降、世話をする人が去った牛舎では、餌も水も与えられず餓死する牛が続出した。さらに5月12日、国が出した家畜への安楽死処分指示を受けて、牛は次々に殺処分にされ、その光景は心に迫ってくる。

しかし、牛飼いたちのなかには殺処分に同意せず、立ち入り禁止の警戒区域に餌を運んでまで牛を生かそうとする者がいた。すでに経済的な価値はゼロとなった牛を、被曝の危険を冒してまで生きながらえさせるのはなぜか? 牛を生かす意味とは? 牛がふるさとを守るとはどういうことなのか?

2013年8月の避難指示区域の見直し後、人が立ち入れない帰還困難区域と、人が住めない居住制限区域を合わせると、東京23区全体の面積を超える。これだけの広さの国土が放射能汚染のために失われようとしている。2014年1月には、最後の放れ牛の捕獲・安楽死処分が行われ、原発事故後に出現した放れ牛は姿を消した。

しかし、4年が経った今も旧警戒区域の中では、安楽死処分に同意しない牛飼いたちによって500頭以上の牛が飼養され、生き延びている。土壌や牛の内部被曝の調査に奮闘する研究者たちもいる。絶望的な状況の中で、牛たちは何を語り、何を教えてくれるのか?

「なんで殺さなきゃいけないんだ。うちの牛、何も悪いことしてないのに。同意しないよね? する? しないよね?」(第八章より)

最初は牛と土を別個のものと考えて取材してきた私であったが、福島に来て多くの牛と牛飼いたちに接することで、そして土にまみれた牛の死を眼前にすることによって、この二つは徐々につながっていった。 (第九章より)

 
「ここは放射能に汚染されたけど、頑張って生きているよ」
双子の兄弟牛。「安糸丸」(左)と「安糸丸二号」(右)

■目 次

  1. 序 章  安楽死という名の殺処分
  2. 第一章  警戒区域の牛たち ――餓死でも安楽死でもなく
  3. 第二章  飯舘村の牛たち ――人も牛も姿を消した
  4. 第三章  飛散した放射性物質 ――土と動物の被曝
  5. 第四章  放れ牛と牛飼いの挑戦 ――牧柵の内と外……牛の生と死
  6. 第五章  ふるさとを遠く離れて ――牛の時間と人間の時間
  7. 第六章  牛が生きつづける意味 ――牛飼いを支援する研究者
  8. 第七章  被曝の大地に生きる ――家畜と野生の狭間で
  9. 第八章  帰還困難区域の牛たち ――牛が守るふるさと
  10. 第九章  検問を越えて牛の国へ ――牛が教えてくれたこと
  11. 終 章  牛と大地の時間
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