『無限充足』
―高田俊昭画文集―

著者 高田俊昭
発行所 ライブストーン
発売元 星雲社
本体 2,600円+税
A4変形判 104ページ
ISBN4-7952-8872-0C0071

 

     

 
幻想の湖
 
     

高田俊昭さんは、原因も治療法もわからない難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者で、1991年に休職して以来、主に在宅で療養中です。

ALSはすべての運動神経系の機能が失われ、食べること、話すこと、呼吸まで奪われるが、知覚や意識は正常に保たれるという苛酷な病気です。

高田さんは病状の進行と死の不安に耐えながら、絵を描き、文章を綴ってきました。1997年には、東京で催された「呼吸器をつけたALS患者の三人展」にも出展。淡く繊細なタッチの水彩画は、生まれ育った醍醐寺周辺と勤務先の鴨川付近の風景が主なモチーフになっています。

 
日吉の紅葉
 
     

高田さんは、日本ALS協会近畿ブロックの会報に次のような文章を寄せています。「医学書にはこう書かれてありました。『数年で結局は死に至る』。その言葉が脳裏に焼き付いて離れず、いままでずっと引きずってきたような気がします。いかに生きるかというよりも、いかに死ぬるか、その瞬間までいかに平常心を保てるかが大きな命題でありました」

そんなとき、むくむくと頭をもたげてきたのが、絵に対する「小さな情熱」でした。「描きたい、むしょうに描きたい。だが結果的に私に残された絵画の時間は約一年だった。特に後半は急速に腕の力が衰え、筆もわずか数秒でポロリと落ちてしまうほどであった。

 
希望と絶望のはざまに
 
     

それは私の人生にとって最後に残った、線香花火のように小さいが激しく燃えてヤナギの葉をいっぱい伸ばししぼんでいった、私の臆病だった小さな情熱」

ALS患者の中には、口に筆をくわえて描く人もいます。しかし、高田さんの場合は、首の筋肉が早くから衰えていたためにその形は無理でした。右腕をつり上げ、絵筆を指に結わえて、可能なかぎり描き、憑かれたように、約七十点の絵を描きあげました。

絵筆を持てなくなった高田さんは、発語障害も進み、意思伝達用に工夫されたパソコンを使うようになりました。コミュニケーション手段は、透明な文字盤を通して目と目を合わせて五十音の文字を選択していくか、唇などのわずかな動きをとらえるセンサーのスイッチを用いてパソコン画面に表示するしかありません。

 
気の真髄
   

「体は動かず、声すら奪われた今でも、大樹のように酸素を放出し、時には疲れた旅人にやすらぎの木陰を提供できるような、そんな大樹になって妻や子供にメッセージを送りたい」

 

紹介された新聞の記事から
■讀賣新聞1999年4月1日付夕刊
■朝日新聞1999年4月25日付朝刊

 

 


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『無限充足』讀賣新聞1999年4月1日付夕刊から
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